脂質異常症:将来の血管を守るために
はじめに
こんにちは。あおい内科の青井です。
「健康診断の結果を見て、初めて耳にする言葉に戸惑っている」
「再検査と言われたけれど、どこも痛くないから実感がわかない」
脂質異常症は、かつて「高脂血症」と呼ばれていたもので、現代の日本人にとって非常に身近な生活習慣病の一つです。自覚症状がないため放置されがちですが、実は体の中では少しずつ、着実に「動脈硬化」が進んでいるかもしれません。
このページでは、脂質異常症とはどのような状態なのか、なぜ治療が必要なのか、そして日常生活でどのような工夫ができるのかを、内科医の視点からわかりやすく解説します。
脂質異常症とはどんな病気か?
私たちの血液中には、主にコレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)・リン脂質・遊離脂肪酸の4種類の脂質が存在しています。
これらは本来、細胞膜を作ったり、ホルモンの材料になったり、エネルギー源として働いたりする、体にとって必要不可欠なものです。
これらの脂質のバランスが崩れ、血液中に多すぎたり少なすぎたりする状態のことを「脂質異常症」と言います。
| 項目 | 名称 | 基準値 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール(悪玉) | 高LDLコレステロール血症 | ≧140 mg/dL |
| HDLコレステロール(善玉) | 低HDLコレステロール血症 | <40 mg/dL |
| 中性脂肪(トリグリセリド) | 高トリグリセリド血症 | ≧150 mg/dL |
ポイント:LDLコレステロールとHDLコレステロールの違い
- LDLコレステロール:いわゆる悪玉コレステロールです。血液中で増えすぎると、血管内に沈着・蓄積し、動脈硬化が進行します。
- HDLコレステロール:いわゆる善玉コレステロールです。蓄積したコレステロールの除去、抗酸化作用があり、動脈硬化を防ぐ働きがあります。
なぜ放置すると怖いのか?
脂質異常症の最大の特徴は、「どれだけ数値が悪くても、全く症状が出ない」という点です。
しかし、自覚症状がないからといって放置していると、知らない間に血液中のコレステロールが血管の内側に沈着し、血管が狭く、硬くなっていきます。これが「動脈硬化」です。
動脈硬化が進むと、ある日突然、血管が詰まります。
詰まる血管の部位によって下記のような病気を発症します。
- 虚血性心疾患:心臓の血管が詰まると、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。突然死の原因となります。
- 脳血管障害:脳の血管が詰まると、脳梗塞を引き起こします。手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
- 末梢動脈疾患:足の血管が詰まると、足に痛みが出ます。最悪の場合は足先が壊死します。
脂質異常症を治療する本当の目的は、数値を下げることそのものではなく、こうした「人生を大きく変えてしまう病気」を未然に防ぐことにあります。
脂質異常症の原因
脂質異常症の原因は一つではありません。複数の要素が組み合わさっています。
- 食生活の偏り
- 牛肉・豚肉・鶏肉などの脂身や、バター・チーズ・生クリームなどの乳製品には飽和脂肪酸が多く含まれており、悪玉コレステロールが上昇する原因となります。また、麺類や菓子パン、甘い洋菓子など、糖質を含む食品の摂取量が多いと、中性脂肪が上昇します。
- 運動不足
- 運動不足の状態が続くと、悪玉コレステロールが増えやすく、善玉コレステロールが減りやすくなります。
- 肥満
- 血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の効きが悪くなることで、体内の脂質代謝が変化し、中性脂肪が増加したり、善玉コレステロールが減少したりします。
- 加齢や体質の変化
- 加齢とともに代謝が落ちていきます。特に女性では、閉経に伴ってコレステロール値を適切に保つ「エストロゲン」というホルモンが減少するため、50歳前後から悪玉コレステロールが急激に上昇することが多いです。
- 遺伝(家族性高コレステロール血症)
- 生活習慣に関わらず、遺伝的にコレステロールが高くなりやすい方がいらっしゃいます。この場合は、早期からの適切な内服治療が非常に重要です。
治療の流れ
当院では、患者さん一人ひとりのリスク(年齢、性別、体重、他の持病、喫煙の有無など)に合わせて、無理のない範囲で治療計画を立てていきます。
ステップ1:食事内容の見直し
最も重要ですが、なかなか実践が難しい部分でもあります。
「食べてはいけない」ではなく「賢く選ぶ」という考え方を大切にします。
- 油の質を変える: 肉の脂を控え、魚の油(EPA/DHA)や植物性の油を活用しましょう。
- 食物繊維を摂る: 野菜、海藻、大豆製品などはコレステロールの吸収を穏やかにします。
- 食べすぎ注意:高カロリーの食品、洋菓子、甘い食べ物や飲み物は控えめに。
ステップ2:適度な運動
激しい運動は必要ありません。
1日30分程度のウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳など、「少し息が弾むけれど話しながら続けられる」程度の有酸素運動が、脂質バランスの改善に非常に有効です。
ステップ3:薬物治療
食事や運動を数ヶ月続けても改善が見られない場合や、すでに動脈硬化のリスクが高い場合には、無理をせずお薬の力を借りましょう。
最近の内服薬は非常に効果が高く、かつ副作用も抑えられています。
コレステロールの数値が安定することで、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを確実に下げることができます。
よくある質問
Q. 数値が少し高いだけですが、すぐに薬を飲む必要がありますか?
A. 他にリスク(高血圧、糖尿病、喫煙など)がなければ、まずは3〜6ヶ月程度の生活習慣改善から始めることが一般的です。心臓病や慢性腎臓病の既往がある方、家族性高コレステロール血症の方は早めの治療が望ましいです。
Q. お酒はやめなければいけませんか?
A. 適量であれば楽しんでいただけますが、中性脂肪が高い方は注意が必要です。特にビールや日本酒などの糖質を含むお酒や、一緒に食べる「おつまみ」の選び方が重要になります。
Q. 魚の油のサプリメントは効果がありますか?
A. EPAやDHAには中性脂肪を下げる効果が認められており、医薬品としても使用されています。ただし、サプリメントはあくまで補助ですので、まずはバランスの良い食事を心がけましょう。
このような方はご相談ください
- 健診で「脂質異常症」を指摘された
- 血縁にコレステロールが高い方や、若くして急死された方がいる
- 高血圧や糖尿病、慢性腎不全がある
- コレステロールをこのままにしておいていいのか心配
おわりに
脂質異常症は、痛みがないからこそ、自分一人で管理し続けるのが難しい病気でもあります。
健康診断の結果を「ただの数字」として終わらせるのではなく、今の自分の体が発している「少し休んで、ケアしてほしい」というサインとして受け止めてみませんか。
名古屋市中川区のあおい内科では、総合内科専門医・腎臓専門医の立場から、あなたが10年後、20年後も今と変わらず元気に過ごせるよう、サポートいたします。
不安なこと、わからないことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。





