糖尿病と向き合い、未来の「腎臓」を守るために
はじめに
こんにちは。あおい内科の青井です。
「健康診断で血糖値が高いと言われたけれど、どこに行けばいいかわからない」
「糖尿病と言われたけれど、特に痛くも痒くもないし、放置していても大丈夫だろう」
「食事制限ばかりの生活になるのが怖くて、受診をためらっている」
そんな方はいらっしゃいませんか?
糖尿病は、現代の日本において非常に身近な病気ですが、同時に最も誤解や軽視されやすい病気でもあります。
しかし、腎臓内科医として日々多くの患者さんと接している私から、これだけは最初にお伝えさせてください。
「糖尿病治療の真の目的は、数値を下げることではなく、10年後、20年後のあなたの自由な生活を守ることです。」
このページでは、糖尿病の基礎知識から、治療、そして当院がなぜ「腎臓」の視点から糖尿病を診るのかについて、詳しく解説していきます。
糖尿病とはどのような病気か?
血糖値が高い状態が続く「血管の病」
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が正常な範囲を超えて高い状態が続く病気です。通常、私たちの体は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって、血糖値を一定の範囲に保っています。しかし、このインスリンの出が悪くなったり、効き目が弱くなったりすることで、血液中に糖が溢れてしまいます。
「糖」は血管を傷つける「ガラスの破片」
なぜ血糖値が高いといけないのでしょうか。
私はよく患者さんに、「血液中の過剰な糖は、血管の壁を傷つける細かなガラスの破片のようなものです」と説明します。
血管は全身に張り巡らされています。そのため、高血糖が続くと、心臓、脳、目、そして「腎臓」など、あらゆる臓器の血管がボロボロになってしまいます。糖尿病が「全身病」と呼ばれるのはこのためです。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
糖尿病には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 1型糖尿病:自己免疫の機序により、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど出なくなることで発症する糖尿病です。若いかたに多く、インスリン注射が必要となるケースがほとんどです。
- 2型糖尿病:遺伝的な体質を基礎に、過食・肥満・運動不足・ストレスなどの環境因子が加わることで発症する糖尿病です。9割以上のかたはこちらの2型糖尿病であり、一般的に「糖尿病」というと2型糖尿病を指すことが多いです。
糖尿病の症状と診断基準
恐ろしいのは「無症状」であること
糖尿病では多くの場合、初期には自覚症状がほとんどありません。
- 喉が渇いて、水をたくさん飲んでしまう
- 尿の回数が増える、尿が泡立つ
- 急に体重が減ってしまう
- 体が怠い、疲れやすい
これらの症状が出たときには、すでにかなりの高血糖状態になっていることが多いです。
糖尿病と言われたけれど特に症状がないからといって放置してしまうのが最も危険です。
診断の指標
- 空腹時血糖:126 mg/dL 以上
- 随時血糖:200 mg/dL 以上
- HbA1c:6.5% 以上
これらを組み合わせて診断します。
中でもHbA1cは、過去1~2ヶ月分の血糖値を反映する重要な指標となります。
なぜ腎臓内科で糖尿病を診るのか?
「糖尿病なら糖尿病内科では?」と思われるかもしれません。もちろん、血糖管理は糖尿病内科の専門領域ですが、実は糖尿病のゴールを左右するのは「腎臓」であると言っても過言ではありません。
糖尿病性腎症という脅威
糖尿病の三大合併症(しめじ:神経障害、網膜症、腎症)の中で、最も生命予後や生活の質(QOL)に直結するのが「糖尿病性腎症」です。糖尿病性腎症の方は年々増えており、現在、日本で新しく透析導入になる原因の第1位がこの糖尿病性腎症です。
腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する「フィルター」の役割を担っています。このフィルターは、非常に細い血管(毛細血管)が毛糸の玉のように集まってできています(糸球体と言います)。糖尿病になると、この毛細血管がダメージを受け、糸球体の構造が破壊されることで、徐々に腎機能が落ちていってしまいます。
腎臓内科の強み
私は腎臓内科医として、糖尿病性腎症によって腎機能が悪くなった患者さん、透析になった患者さんを多く診療してきました。その経験をもとに、単に「HbA1c(血糖の指標)を下げる」だけでなく、「どうすれば腎機能を守りきれるか」という視点で治療プランを立てます。
- 厳格な血圧コントロール
- 蛋白尿に対するアプローチ
- 食事療法における「糖質」と「タンパク質・塩分」のバランス調整
- 糖尿病性腎症が進行してしまった際の合併症治療
これらを総合的に管理できるのが、腎臓内科で糖尿病を診療する大きなメリットです。
糖尿病の治療
糖尿病治療薬の進歩は目覚ましいです。
以前は「血糖値を下げること」が主な治療目標でしたが、現在は「血糖値を下げながら、さらに心臓や腎臓などの臓器も守る」ことが可能となってきています。
特に注目されているのが以下の2つの薬剤です。
- SGLT2阻害薬:糖分を尿から排泄する薬剤です。もともとは血糖降下薬として開発されましたが、今では腎不全や心不全の悪化を防ぐ薬として、腎臓内科や循環器内科の領域でも重要な薬剤となっています。
- GLP-1受容体作動薬:インスリンの分泌を促すだけでなく、食欲を抑えたり、体重を減らしたりする効果があります。心筋梗塞や脳梗塞など重篤な疾患を減らしたり、アルブミン尿を抑制する効果が報告されています。GIP受容体も刺激する注射薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)であるチルゼパチド(マンジャロ)は、GLP-1受容体作動薬よりもHbA1c改善や体重減少効果が高く、糖尿病治療を変えうる薬剤として期待されています。
もちろん、メトホルミンのように古くから使用されている薬剤にも素晴らしいものも多数あり、それぞれの患者さんの状態にあった薬剤を提案します。
当院の診療体制について
当院は腎臓内科クリニックとして、「糖尿病性腎症の予防・治療」にフォーカスした診療を行っております。
患者さんに安全かつ質の高い医療を提供するため、診療の範囲を以下のように定めております。
- 当院で対応可能な方:飲み薬(経口血糖降下薬)や、マンジャロなどの注射薬を含むGLP-1受容体作動薬での治療を行っている方、またはこれから開始する方
- 専門病院へのご紹介となる方:すでにインスリン注射を行っている方、1型糖尿病の方、妊娠糖尿病の方、血糖自己測定(SMBG)や持続グルコースモニタリング(CGM)による頻回の血糖測定が必要な方
これには理由があります。
インスリンやCGMを用いた治療はデバイスの進化が目覚ましく、非常に緻密な調整が求められる専門領域です。
当院は「腎臓を守るための全身管理」を主眼に置いているため、インスリン依存状態の方については、より設備と専門スタッフが充実した「糖尿病専門クリニック」や「基幹病院」で治療を受けていただくことが、患者さん自身の安全に繋がると考えております。
「自分はどちらに該当するのかわからない」という場合は、お薬手帳をお持ちの上、受診していただいて大丈夫です。適切な医療機関への橋渡しを含め、誠実に対応させていただきます。
また、他院でインスリン治療を受けている場合でも、腎臓の主治医として、高血圧や糖尿病性腎症・慢性腎不全について当院で治療を行うことも可能です。
診療の流れ
- 問診・検査
- これまでの経過を確認します。
- 血液検査を行い、現在の血糖値やHbA1c、腎機能などを調べます。
- 尿検査を行い、蛋白尿やアルブミン尿の有無、ケトン体の有無を調べます。
- 原因の特定・合併症の評価
- インスリン分泌能(早朝空腹時Cペプチドなど)、1型糖尿病の原因となるGAD抗体などを調べます。
- 必要に応じて、心電図、胸部レントゲン検査、超音波検査(心臓・頸動脈)、脈波検査(ABI)を行い、心疾患や動脈硬化の程度を評価します。
- 眼の合併症を防ぐため、眼科への受診を提案します。
- 治療
- 病状に応じて、適した薬剤を処方します。
- 普段の生活で気をつけるポイント(食事内容・運動・減量・禁煙など)をお話します。
- 定期的なフォローアップ
- 適切な血糖値を維持できるよう治療を継続していきます。
- 腎臓に悪影響がでていないか、慎重にフォローしていきます。
このような方はご相談ください
- 健診で「尿糖」「糖尿病」を指摘された
- 健診で「たんぱく尿」「クレアチニン高値」「腎機能障害」を指摘された
- 糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症の治療も受けている
- 腎臓の機能を長持ちさせたい
- ご家族に透析を受けている方がいる
まとめ
糖尿病と診断されると、「自分のこれまでの生活が悪かったんだ」と自分を責めてしまう方がいらっしゃいます。
しかし、糖尿病は遺伝的な要因も強く、あなたがすべて悪いわけではありません。
大切なのは、過去を悔やむことではなく、これからどう過ごすかです。
名古屋市中川区のあおい内科は、あなたの生活を否定するのではなく、今の生活の中でどうすれば「健康寿命」を延ばせるかを一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
腎臓を守ることは、命を守ること、そして人生の質を守ることです。
少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。





