糖尿病関連腎臓病(DKD)
糖尿病関連腎臓病(DKD)とは?
糖尿病関連腎臓病(Diabetic Kidney Disease:DKD)とは、糖尿病が原因で生じる腎臓病の総称です。
糖尿病と腎臓には深い関わりがあり、腎臓病は糖尿病の3大合併症として広く知られていました。
典型的な経過としては、蛋白尿が出てきた後に徐々に腎機能が低下してくることが多く、以前は糖尿病性腎症と呼ばれていました。
しかし近年、糖尿病に加えて高血圧などの動脈硬化を背景として、蛋白尿を伴わないまま腎機能が低下する場合があることが報告され、糖尿病性腎症と合わせて糖尿病関連腎臓病(DKD)と呼ばれるようになりました。
糖尿病関連腎臓病(DKD)は、典型的な糖尿病性腎症を内包するより広い概念ということです。

糖尿病関連腎臓病(DKD)の病期分類
DKDの方では尿中に漏れ出るアルブミン(たんぱく質の一種です)の量が増えると、将来的に腎臓の機能を低下させ、透析が必要となってしまうリスクが高くなることが知られています。
そのため、DKDは尿中アルブミンと腎臓の機能(推定糸球体濾過量)で病期を判定します。
尿中アルブミンの量が増えるほど、腎臓の機能が落ちるほど重症となります。
| 病期 | 尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR) 尿蛋白・クレアチニン比(UPCR) | 推定糸球体濾過量 (eGFR) |
|---|---|---|
| 第1期 (正常アルブミン尿期) | UACR <30 | 30≦ |
| 第2期 (微量アルブミン尿期) | UACR 30~299 | 30≦ |
| 第3期 (顕性アルブミン尿期) | UACR ≧300 あるいは UPCR ≧0.5 | 30≦ |
| 第4期 (腎不全期) | 問わない | <30 |
| 第5期 (腎代替療法期) | 透析療法中あるいは腎移植後 |
糖尿病関連腎臓病(DKD)の症状は?
多くの腎臓病に共通することですが、DKDは病気が進行するまで症状がほとんどありません。
病気が進行して初めて、足のむくみ、息切れ、倦怠感、食欲不振などの症状が出現します。
- 第1期~第2期
ほとんど無症状です。 - 第3期
尿の泡立ちがみられることがあります。 - 第4期~第5期
足のむくみ(浮腫):排泄しきれない塩分や水分が体に溜まるとむくみが出現します。典型的な糖尿病性腎症のかたでは、蛋白尿が多量に出ることで体内のたんぱく質が低下してしまい、むくみが出ることもあります(=ネフローゼ症候群)。
息切れ・疲れやすさ:貧血が進行したり、体液が過剰になると出現します。
食欲不振・吐き気・かゆみ(尿毒症):老廃物が体内に蓄積することで出現します。
また、DKDがなくとも、喉が乾いて水分をいっぱい飲んでしまう、尿の量や回数が増えた、疲れやすい、体重が減っているなど、糖尿病そのものによる症状(=高血糖症状)がある方は要注意です。
放置するとどうなる?
DKDが進行すると徐々に腎機能が低下していき、最終的には血液透析などの腎代替療法が必要となります。
また、DKDは腎臓のみならず全身の血管とも深く関与しています。
そのため、
- 心筋梗塞・狭心症
- 心不全
- 脳梗塞
などの心血管疾患のリスクも高くなります。
実際に、透析が必要となる前に心血管疾患を発症する患者さんも少なくありません。
いずれも、いざ発症してしまうと命に関わったり、重篤な後遺症が残ってしまう疾患であり、これらの病気を発症する前に治療を進めていくことが非常に重要です。
病院ではどんな検査をする?
尿検査
尿アルブミン・クレアチニン比(UACR)、尿蛋白・クレアチニン比(UPCR)を測定します。
また血尿の有無もチェックし、DKD以外の腎臓病がないかも評価します。
血液検査
クレアチニン、eGFR、HbA1cなどで現在の腎機能や血糖値の状態をチェックします。
尿蛋白の程度や血尿の有無に応じて、DKD以外の腎臓病がないかを検査します。
超音波検査
必要に応じて、腎臓の大きさや形を評価します。
合併症の評価
必要に応じて、心電図、胸部レントゲン検査、脈波検査(ABI・CAVI)、頸動脈エコーなどで心臓や血管の合併症がないかをチェックします。
糖尿病関連腎臓病(DKD)の治療
DKDの治療では、血糖・血圧・尿蛋白を総合的にコントロールし、腎臓をできるだけ長く守ることが目標です。
①血糖値を適切にコントロールする
糖尿病の基本は血糖値の管理です。
血糖値をコントロールすることが、腎臓を守ることにつながります。
食事療法や運動療法に加え、患者さんの状態に合わせて飲み薬や注射薬を使用します。
近年では、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬という類の血糖降下薬は、血糖値を改善するだけでなく、腎臓や心臓を保護する効果があることが報告されており、DKDの治療で重要な薬となっています。
②血圧をしっかり下げる
高血圧はDKDを進行させる大きな原因です。
ACE阻害薬やARBと呼ばれる降圧薬は、血圧を下げるだけでなく尿蛋白を減らし、腎臓を守る効果があります。
③フィネレノンによる腎臓・心臓の保護
近年、フィネレノンという新しいタイプの薬がDKDの治療で使用されるようになりました。
フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬という作用機序のお薬で、腎臓や心臓で起こる炎症や線維化(組織が硬くなる変化)を抑えることで、腎機能の低下や心不全などのリスクを減らすことが期待されています。
ACE阻害薬やARBを内服していてもアルブミン尿が出ている方がよい適応になります。
血液中のカリウムが高くなることがあるため、定期的な血液検査を行いながら使用します。
④生活習慣の改善
薬だけではなく、毎日の生活も重要です。
- 塩分を控える(1日6g未満を目標)
- 適正体重を維持する
- 適度な運動を続ける
- 禁煙する
- 十分な睡眠をとる
これらを続けることで、DKDの進行を抑える効果が期待できます。
腎臓専門医にお任せください
DKDの治療は、この数年で大きく進歩しています。
SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンなど、腎臓や心臓を保護する効果が期待できる薬が登場し、以前よりも腎機能の低下を抑えられる可能性が高まっています。
当院では患者さん一人ひとりの状態に合わせて、これらの薬剤を適切に組み合わせた治療をご提案します。
このような方はご相談ください
- 糖尿病がある
- 健診で尿蛋白を指摘された
- クレアチニンが高いと言われた
- eGFRが低下している
- 慢性腎臓病(CKD)が心配
- 糖尿病と腎臓病をまとめて診てもらいたい
まとめ
糖尿病関連腎臓病(DKD)は、糖尿病に関連して起こる腎障害の総称です。
従来の「糖尿病性腎症」を含む、より広い概念として使われています。
初期には症状がほとんどありませんが、尿検査や血液検査で早期に発見し、適切な血糖管理や血圧管理を行うことで、将来的な腎機能の低下や透析導入を防ぐことができる可能性があります。
名古屋市中川区八田のあおい内科では、総合内科専門医・腎臓専門医の立場から、糖尿病と糖尿病関連腎臓病(DKD)を総合的に診療しています。
健診で異常を指摘された方や、糖尿病で腎臓が心配な方はお気軽にご相談ください。





